「おたんじょうび」  蒼風薫


 

夢の入った封筒を
そらの手にまかせたんです
翼をいただいた封筒は
薫風にみちびかれて

ゆくでしょう
かなうかなって
膝をかかえてうずくまる
あの少女のころの

いまのわたしに伝えたかった想い
きちんと届いているからって
それだけを

便箋には描いてありました
本当はわたしはまだ、
胎児です

産声をあげたことがなく
ひと、となったことがなく
何の間もなく

在りました
きょう、
生まれてみようかな

そんなことを
考えて
雨のそぼ降る外をかなしく

じっとみつめているのです


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